※本ページはプロモーションが含まれています。

【機械設計】3DAモデルとはなに?これからは3DAモデルが主流になる!?メリット・デメリット

 

近年、機械系のCAD業界において「3DAモデル」が注目されつつあります。また、政府(デジタル庁)も3DAモデルの普及を推進しています。しかしながら、3DAモデルはまだまだ導入が進んでおりません。

ネットで「3DA」と検索しても、あまり詳しい情報が出てこないのがその証拠とも言えるのではないでしょうか。

 

私は、設計者として第一線で働いておりますが、3DAモデルは、「少しずつ動き始めたかな」といった印象です。

そこで今回は、3DAモデルとはなにか、メリット・デメリットなどについて、設計者の視点もふまえながらご説明していきます。

 

 

 

3DAモデルとは?

3DAモデル(3D annotated model:三次元製品情報付加モデル)とは、3次元CADを用いて作成した3Dモデルに、要求事項や管理情報(寸法、幾何公差、表面性状、材料、溶接、表面処理、注記、製品名称、製品番号、部品番号、改訂履歴、など)を直接付加したモデルです。必要に応じて、2D図面も使用します。3D図面と呼んだりもします。

 

今までは、3Dモデルを作成し、3Dモデルをもとに2D図面を描いて、2D図面に寸法や公差、注記などを書き込んでいました。したがって、3DAモデルというのは、今までの3Dモデルと2D図面を1つに集約したものなのです。

 

 

 

3DAモデルのJIS規格について

3DAモデルは、「JIS B 0060:デジタル製品技術文書情報」にて定められています。さらに、下の表のように細かく分けられています。

 

3DAに関するJIS一覧

規格番号 規格名称
JIS B 0060-1 デジタル製品技術文書情報-第1部:総則
JIS B 0060-2 デジタル製品技術文書情報-第2部:用語
JIS B 0060-3 デジタル製品技術文書情報-第3部:3DAモデルにおける設計モデルの表し方
JIS B 0060-4 デジタル製品技術文書情報-第4部:3DAモデルにおける表示要求事項の指示方法-寸法及び公差
JIS B 0060-5 デジタル製品技術文書情報-第5部:3DAモデルにおける幾何公差の指示方法
JIS B 0060-6 デジタル製品技術文書情報-第6部:3DAモデルにおける溶接の指示方法
JIS B 0060-7 デジタル製品技術文書情報-第7部:3DAモデルにおける表面性状の指示方法
JIS B 0060-8 デジタル製品技術文書情報-第8部:3DAモデルにおける非表示要求事項の指示方法
JIS B 0060-9 デジタル製品技術文書情報-第9部:DTPD及び3DAモデルにおける一般事項
JIS B 0060-10 デジタル製品技術文書情報-第10部:組立3DAモデルの表し方

 

 

JISはネットで調べればおおよそ閲覧できますが、イラスト無しの文字だけだったりします。正式なJISを閲覧する場合には、「日本産業標準調査会」のサイトで利用者登録することで閲覧できます。法人だけでなく個人でも登録できます。技術者にとって、JISは理解していなければいけない内容ですので、必ず登録しましょう。

参考までに、利用者登録操作マニュアルのリンクを載せておきます。

参考:利用者登録操作マニュアル|日本産業標準調査会ウェブサイト

 

 

3DAモデルのメリット

 

 

 

ペーパーレス化

3DAモデルは、今までの「3Dモデル」と「2D図面」を1つにまとめたものですので、3DAモデルが1つあれば、全ての情報を得ることができるのです。したがって、2D図面を排除することができます。

 

 

 

加工プログラム作成や評価方法の簡略化

3DAモデルに表面粗さ等の指示が全て入っているので、加工プログラム作成や、完成品評価プログラム作成が自動でできます。ただ、このあたりは今の3Dモデルでもおおよお出来ますので、入力作業が多少削減された程度かと思います。

 

 

 

見積りの簡略化

先ほどご説明した内容と同様に、3Dモデルから製造コストを自動で算出することも可能です。

例えば、部品サプライヤーのミスミでは、meviy(メヴィー)というサービスがあります。meviyとは、機械部品の見積もりから製造までをデジタル化し、3Dモデルのまま部品調達を可能にする、3D CAD設計者向けのサービスです。

 

つまりは、3Dモデルさえあれば、部品ができてしまうということなのです。

 

 

手戻りの低減

今までの製品図面には、例えばダイカスト製品の場合であっても、PL(型割り)やゲートなどは記載していませんでした。どこに記載しているかというと、ダイカストメーカー等と取交している図面に記載しているのですが、この図面はダイカストメーカーが発行し、設計者が受領することで取交しています。つまり、設計が発行している図面とは別に、もう1つ図面のやり取りが発生しています。

これを、3DAモデルに全ての情報を落し込んでから取交すことで、設計者の意図も盛り込んだ状態でモデルを送付することができ、ダイカストメーカーとのやり取りの回数が減ります

 

 

図物不一致の低減

先ほどご説明した通り、設計が発行している図面にはPL(型割り)やゲートや抜き勾配などは落し込まれていません。そうすると、ダイカスト製品などでは、3Dモデルと完成品で形状にアンマッチが生まれます。そのため、完成品はダイカストメーカーと取交している図面を引っ張ってくる必要があります。

しかしながら、3DAモデルでは、完成品と同じ形状でモデルを作るため、図物の不一致が低減されます

 

個人的に3DAを導入する一番のメリットは、この「図物不一致の低減」にあると思っています。

 

 

3DAモデルのデメリット

メリットを見ると、「3DAモデルで進めた方がいいじゃん」と誰しもが思うかもしれませんが、さまざまなデメリットもあるのです。

 

 

 

手戻りやトラブルの増加

ダイカスト製品を外注する場合、PL(型割り)やゲート位置などは、ダイカストメーカーのノウハウが詰まっているので、設計だけで決めることは難しいです。また、外注先のダイカストメーカーと新規開発の度に打合せをするのは、それだけで工数が大幅にかかってしまいます。さらに、外注先は複数のメーカーの中から選ぶわけですが、外注先の選定というのは、製品形状がほぼほぼ確定してからになるのです。製品形状が決まっていない状態で外注先に依頼してしまうと、形状変更や開発中止になった場合に、トラブルになりかねません。

つまり、ダイカスト製品の開発を進めている場合は、社内にダイカストのノウハウが無ければいけないということになります。

 

 

設計者の負担増

3DAモデルを導入すれば2D図面が無くなるので設計者の負担が軽減されると思われがちですが、必ずしもそう上手くはいかないのです。

結局のところ、3DAモデルに2D図面の情報を追加することになるので、情報量自体に変化はありません。さらに、2D図面に記入する場合は、メモ書きのように直観的に記載できたのですが、3DAモデルに書き込むのはわずらわしい部分もあります

 

ダイカスト製品等では、3DAモデルに、PL(型割り)や抜き勾配を設定する必要があるのですが、0から形状を作っていく中で、同時にPLや抜き勾配を考慮しながら作るのは、非常に難しいです。なので、今まで通りの3Dモデルを作ってから、PLや抜き勾配を設定していくことになり、むしろ手間です。そもそも、今までは抜き勾配などが無い3Dモデルをダイカストメーカーに送付し、ダイカストメーカーのノウハウなどを落し込んでPLや抜き勾配を設定していたのですが、3DAモデルは、「それらを設計者がやれ」ということなのです。

そうなると、設計者は製品開発の知識のほか、ダイカストメーカーレベルの金型の知識が要求されることになります。

上でもお話しましたが、年間で何件も開発案件がありますので、毎回毎回ダイカストメーカーを呼んで意思入れしていたら、工数や依頼コストが跳ね上がります。

 

設計者に金型の知識も身に付けろというのは、なかなか難しい話です。ベテランの設計者であれば、今までの経験からダイカストの知識はおおよそ理解しているかと思いますが、ただでさえ設計者を育てるのは難しいのに、さらに幅広い知識を身に着けさせるのは、教育者の負担も相当なものになりますね…。

 

 

 

点検作業の負担増

この、点検作業の負担増というのは、あまり気にされづらいポイントかもしれませんが、意外と無視できないくらいに考えておかなければならないポイントなのです。

図面を正式に発行(正式保管)する場合、課長やチームリーダーがミスが無いかどうか最終チェックをして承認する流れとなっています。今までの、3Dモデルと2D図面の組合せの時には、会社にもよると思いますが、2D図面のみのチェックで承認されることがほとんどです。そのため、課長やチームリーダーは、図面の知識は非常に豊富なのですが、製図ソフトに触れることがほとんど無く、操作方法を忘れてしまっている方が多いです。しかしながら、3DAモデルになるとCATIA等の製図ソフトを操作して3DAモデルのチェックを行うことになるため、操作方法を身に付ける必要があります

 

 

作図リードタイムの増加

メリットで「手戻り低減」と書きましたが、多くのモノづくり企業の場合、ほとんどが標準化されているため、今では手戻りにかかる工数もあまり発生しません。分かりやすく言うと、ほとんどが既存製品を一部変更するだけの開発のため、大きな手戻りはほぼ無いです。少量多品種の会社であれば、3DAモデルによる手戻りの低減の恩恵を受けられるかと思います。

 

手戻りがあるとすれば、部課長からダメ出しを食らう程度ですかね。(^_^;)

そうなると、3DAモデルを導入することによるトラブルや作図工数、点検工数の増加で、今まで以上に開発工数が必要となってしまいます…。

 

 

 

相互のインフラ整備&使い方教育が必要

メリットで「ペーパーレス化」とは言いましたが、現場で図面を見たいと思った時に、どうすればいいのでしょうか?2D図面が無いので、紙で図面を見ることはできないです。したがって、いたるところに3DAモデルを閲覧できる環境整備をしなければなりません

 

また、基本的に外注先を選定する前に図面を完成させますが、もし選んだ外注先に「3DAモデルには対応できません」と言われたら、急いで今までの3Dモデルや2D図面を作らなければなりません。

そのため、3DAモデルを導入する前に、外注先などが3DAモデルに対応しているのか?3DAモデルで現場や他の部署は回せるのか?といったところを確認・整備していかなければなりません。

 

また、現場や他の部署の方々に対し、3DAモデルにおける各種管理情報の確認方法やビュアーの操作方法などの教育を実施する必要があります。

 

 

海外の状況はどうなっているの?

正式なエビデンスは無いのですが、私の感覚や、聞いた情報によると、海外の方が3DAモデルは普及が進んでいるとのことです。

日本が遅れているようですね…。(^_^;)

 

まあ、図面というのは注記などの文言を除けば、寸法などは日本語が分からなくても通じますので、海外で3DAモデルに対応しているということは、日本人の設計者が意思入れした3DAモデルさえあれば、どの拠点でも同じ部品や製品が造れるということですね。

 

 

 

3DAモデルに対する私の意見

設計業務を行っている私個人の考えとしては、正直なところ3DAモデルはあまり導入したくないです…。

3DAモデルにした時に「これはどうなるの?」「あれはどうなるの?」といった疑問がたくさんあり、ハッキリさせないまま進めたくないです。複雑なモデルの内側の寸法を3DAモデルに記載した際に、3DAモデルを見てパッと判断つきますか?絶対無理ですよ…。A1用紙に百何十個と指示されている寸法であったり幾何公差であったりを、PCの画面の中の3DAモデル1つで確認しようと思ったら、とんでもなくストレスです。

私が務めている会社では、少しずつ3DAモデルを取り入れていますが、全社的に見たら、まだ1%も無いのではないでしょうか。ちなみに、3DAモデルを作りつつ、2D図面も今まで通りに作っています…。結局のところ、客先と取交す図面は2Dなので…。

 

なぜ3DAを導入しようとしているかというと、一番の目的は、メリットでも挙げました「図物不一致の低減」だと思っています。総切削品であれば今までの3Dモデルと同じ形状で完成品が出来上がりますが、ダイカスト品などは後加工をしなければ、抜き勾配や押しピン跡やゲート跡などが残ってしまうので、3Dモデルとは形状が異なってしまいます。きっと、部長や役員はこれが気に食わなかったのでしょう…。

私もそう思わないわけでは無いです。

例えば、構想設計の段階で部品の強度試験(振動評価etc.)をする場合には、総切削品となります。ですが、この総切削品は抜き勾配が無いので、抜き勾配の付き方次第では、評価結果に大きく影響します。

 

マジで、3DAモデルを本格的に導入している会社は、どのように運用されているのか教えて欲しいです。

 

 

あとがき

いかがでしたでしょうか。

今回紹介したメリット・デメリットなどは全てを網羅できているわけではありませんので、「こういったメリット・デメリットがあるよ」という方は、ぜひお問い合わせフォームやメール等で教えていただけますと幸いです。みんなで情報を共有していきましょう!

 

私自身、設計者として第一線で業務を行っていますが、3DAモデルについての情報量がまだまだ少ないのが現状です。3DAモデルのメリットだけ見れば、「どんどん導入していきましょう」という気持ちは分かるのですが、「この場合はどう描くの?」「この場合は?」というように、次々と疑問が挙がっています。総切削品であれば適用は比較的容易かと思いますが、金型成形品のように抜き勾配やPLなども設定していくとなると、3DAモデルを作るのが難しいです。私の会社では、1つの部品でも年間で何万~何百万個のボリュームで作製していますので、実際の現場では、総切削品はまず見ません…。

とはいえ、3DAモデルは今後さらに導入が進んでいくものと思われます。なかなか難しい部分はありますが、会社として導入していく方針なのであれば、覚悟を決めてやるしかないですね…。

 

 

この記事が少しでもみなさんの参考になれば幸いです。
最後までご覧くださいましてありがとうございました。