電気のことは詳しくはないけど、電圧を上げるとなんか恐いと思う方が多いのではないでしょうか。そこで今回は、電圧を上げるとどんなメリットがあって、逆にどんなデメリットがあるのか?勉強していきましょう。
また、こちらの記事で発電所から家庭までの電気の道のりを説明していますので、合わせてご覧ください。
低圧・高圧・特別高圧の違い
余談として、電圧はその値によって「低圧」「高圧」「特別高圧」の3つに分類されています。とくに覚える必要はありませんが、どこに分類分けされるかによって、電気料金の区分けされていたりします。
低圧
低圧とは、直流で750V以下、交流で600V以下の電圧のことを指します。主に、一般家庭や商店向けの電圧帯です。
高圧
高圧とは、直流で750V超~7000V以下、交流で600V超~7000V以下の電圧のことを指します。よく目にするいわゆる電線はには、この電圧帯(6600V)の電気が流れています。
特別高圧
特別高圧とは、直流・交流ともに7000V超の電圧のことを指します。大規模工場や鉄道用の変電所へ送られる電気はおよそ66,000~154,000Vですので、特別高圧に当たります。
電圧を上げることのメリット
電圧を上げることのメリットは、電力損失(電圧降下)が少なくなることです。そして、電力損失が少なければ、遠くまで電気を送り届けることができます。
電圧は要するに電子の速さです。例えば、野球ボールを子供が投げた時と、プロ野球選手が投げた時では、プロ野球選手が投げる球の方が遠くまで届きます。これは、野球ボールの速度の違いによるものです。これと同じように、電圧が高ければ遠くまで電気を送り届けることができますし、逆に電圧が低ければ遠くまで電気を送り届けることはできません。
電力損失とは?
先ほどサラッと「電力損失(電圧降下)」という単語が出てきましたが、いったいどういうものなのでしょう?
電力損失とは、電線やケーブルに電気を流したとき、電源から離れれば離れるほど電圧が低くなる現象の事です。なぜこのような現象が起こるかというと、電線やケーブル自体に少しだけ抵抗があります。その抵抗が原因で若干の熱が発生し、電圧が少しずつ減少していくのです。これは、要するに意図せず電気エネルギーが熱エネルギーに変換されてしまっているのです。
例えば、スマホで長時間ゲームをしていると熱くなったり、電化製品から熱が出ていることがしばしばありますが、あれも意図せず電気エネルギーが熱エネルギーに変換されてしまっているものの一つなのです。
電力損失を少なくするためには
では、どのようにすれば電力損失を少なくすることができるのでしょうか?まずはこちらの計算式をご覧ください。
Q = I2 × R × t
Q:熱量 [J]
I:電流 [A]
R:抵抗 [Ω]
t:時間 [h]
ジュールの法則を見ると、熱を発生させるのに電流値が2乗で掛かっているので、電流値が大きく影響することが分かります。つまり、無駄な熱を発生させないためには、抵抗・時間を一定と考えた時、電流値を下げる工夫が必要となります。では、どのようにすれば電流値を下げることができるのでしょうか。次の式をご覧ください。
P = E × I
P:電力 [W]
E:電圧 [V]
I:電流 [A]
電力は、電圧と電流の掛け算で決まります。遠くに届けたい電力は一定とおくと、電圧を上げることで電流を減らすことができます。
例えば、100万Wの電力を送電したいとします。次の式をご覧ください。
1,000,000 [W] = 1 [V] × 1,000,000 [A]・・・①
1,000,000 [W] = 1,000,000 [V] × 1 [A]・・・②
この2つの式はどちらも同じ100万Wを送電していますが、①の式は100万Aを必要としているのに対し、②の式は1Aしか必要としません。ジュールの法則から、電流値が低ければ発生する熱量は少なくなりますので、②の方が少ない電力損失で送電できるということになります。
電圧を上げることのデメリット
電圧を上げることのデメリットは、感電事故のリスクが高まることです。
電圧の大きさによって、どこまで電気が到達するかが変わります。電気を触った時に、電圧が低ければ指先が痛い程度で済みますが、電圧が高ければ指先から肩までの腕全体に電気が走ったり、心臓まで届いてしまえば死亡する可能性もあります。
例えば、50km/hの野球ボールが当たっても、それで命を落とすことはまずありませんが、300km/hの野球ボールが当たればひとたまりもありません。
感電に付いてはこちらのページで詳しく説明していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
あとがき
いかがでしたでしょうか。電圧は高ければ高いほどより損失なく遠くまで電気を送り届けることができますが、それだけリスクも伴うということが分かりましたね。電気は、使い方さえ間違えなければとても便利なものです。事故には気を付けて、安全で便利な生活を心がけましょう。
最後までご覧くださいましてありがとうございました。